チーム勉強会でクラウドコスト管理について共有しました #FinOps #CFM
私が所属するチームでは、日々の業務で必要な情報や技術をキャッチアップする時間があります。個人で網羅的にキャッチアップするのはもはや難しく、また対応の品質を担保するためにも、決まった時間を設けてチームメンバーでキャッチアップしてワイワイしたり、詳しいメンバーが情報を持ち寄って共有しています。
今回、その時間の中で、クラウドコスト管理について情報共有する機会があったので、内容を公開したいと思います。しっかりとした資料を作成するのではなく、簡易なまとめページをベースに共有しました。
背景
お客様とクラウドコスト(主にコスト最適化)をテーマとする課題へ対応しているチームメンバー内で、改めて下記のようなクラウドコスト管理に関する情報をチーム内で共有しておいた方が良い機運となり、共有する運びとなりました。
主なテーマ
- (個別具体的なの最適化ポイントではなく)FinOps や CFM などのフレームワーク全体像
- 投資・費用対効果といったビジネス価値における考え方や評価方法、指標
対象者
- 基本的な AWS Billing and Cost Management サービスの概要を理解している(例:AWS Cost Explorer, AWS Budgets, Reserved Instances / Savings Plans)
- 個別サービスや機能、クイックウィン最適化のポイントを把握している
話すこと・話さないこと
話すこと
- クラウドコスト管理フレームワーク
- 最適化以外のポイント
目指すところ
- 「クラウドコスト管理のトレンドが大体理解できた」または「必要な時は、この辺を見ればいいのか」という状態になっている
話さないこと
- 個別サービスや機能におけるコスト最適化ポイントや方法
- 例:AWS サービスへの通信を NAT Gateway 経由から VPC Endpoint へ変更する
- 個別サービスに特化した説明
- 例:AWS Cost Explorer とは?こういうことができます。AWS サービスなら Blackbelt がおすすめです
クラウドコスト管理のフレームワーク
今回は FinOps と AWS Well-Architected Framework(W-A) & Cloud Financial Management(CFM) について取り上げています。
FinOps
一つ目は最近、見聞きする機会が増えてきた Finance と DevOps を組み合わせた FinOps です。
- FinOps とは?
詳細は FinOps Foundation が管理するサイトや資料で確認できます。(基本的には英語のみです。最近では FinOps に関するサービスプロバイダーやツールベンダーの記事を翻訳したものや国内の方が執筆した紹介記事も見かけます)
FinOps フレームワークは下記のコンポーネントで構成されています。右下のフェーズがよく見かけるかもしれません。(私も登壇時によく利用しています)
引用元: https://www.finops.org/wp-content/uploads/2024/03/FinOps-Framework-Poster-v4.pdf
- Principles(原則)
- Domains & Capabilities(カテゴリ・目標、具体的な取り組み)
- Core Personas / Allied Personas(登場人物)
- Phases(フェーズ、サイクル)
- Maturity Model(成熟度モデル)
ペルソナが定義されていて、かつ各自の目的や課題があるのがユニークで、これを参考にお客様と話す際にも相手の立場を理解して伝えられると良さそうという意見もありました。
他にもホットな話題としてコストデータの統一規格の FOCUS や FinOps Foundation が年1回実施しているレポートもあります。
- FOCUS
- 市場調査レポート
また24年5月に日立製作所が FinOps Foundation に参加されたのは注目すべきニュースかなと個人的には感じています。
AWS Well-Architected Framework(W-A) & Cloud Financial Management(CFM)
続いては AWS におけるコスト管理のフレームワークとして W-A と CFM です。
- W-A Framework 6つの柱の一つが『コスト最適化の柱』
引用元:https://speakerdeck.com/ohmura/aws-well-architected-framework-oct-2023-update?slide=11
-
コスト最適化の柱の設計原則・重点分野の一つが クラウド財務管理(Cloud Financial Management)
- クラウド財務管理を実装する(Implement cloud financial management)
- 消費モデルを導入する(Adopt a consumption model)
- 全体的な効率を測定する(Measure overall efficiency)
- 差別化につながらない高負荷の作業に費用をかけるのをやめる(Stop spending money on undifferentiated heavy lifting)
- 費用を分析し帰属関係を明らかにする(Analyze and attribute expenditure)
-
クラウド財務管理の4つの柱
- See
- Measurement & accountability(測定と説明責任)
- Save
- Cost optimization(コスト最適化)
- Plan
- Planning & forecasting(計画と予測)
- Run
- Cloud financial operations(クラウド財務運用)
イベント等で見かける CFM フレームワークは基本的には上記 W-A の内容と同義と考えて良さそうです。
引用元:https://speakerdeck.com/ohmura/cloud-financial-management-overview?slide=6
- 可視化
- 最適化
- 計画・予測
- FinOps の実践
またフレームワークに加えて、EBA FinOps Party(コスト最適化の体験型ワークショップ)なども提供されているようです。
その他の考え方として昨年 re:Invent でも紹介されていた THE Frugal Architect があります。
- 解説
- W-A との関連
CFM の具体的なアクションに悩んだ場合は W-A の内容をワークロードへ実装していくことで進めることが出来そうです。
- ベストプラクティスに対する具体的なアクションを学べるワークショップ
個人的な所感
① FinOps 原則と AWS W-A 設計原則は似ている
(目指すゴールが同じなので必然とも言える)
FinOps 原則 | W-A(CFM)設計原則 |
---|---|
チームは協力する必要がある | クラウド財務管理を実装する |
FinOpsデータはアクセス可能でタイムリーである必要がある | 〃 |
クラウドの変動コスト モデルを活用します | 消費モデルを導入する |
クラウドのビジネス価値に基づいて意思決定が行われる | 全体的な効率を測定する |
- | 差別化につながらない高負荷の作業に費用をかけるのをやめる |
誰もがクラウドの使用に責任を持つ | 費用を分析し帰属関係を明らかにする |
集中化されたチームがFinOpsを推進 | - |
② FinOps と W-A(CFM) をどっちが良いのか?
(どちらかを選ばなければならないものではなく、目的を達成するのにマッチする方を取り入れれば良いと個人と思います。)
- ポジティブな要素
FinOps | W-A(CFM) |
---|---|
マルチクラウドを想定 | AWS との親和性(具体的)は高い |
クラウドコストだけではなく SaaS や IT資産管理なども範囲 | AWS 利用者にとっては学習コストは比較的低い |
専門的なナレッジが豊富 | 具体的・詳細なナレッジ(アクション)が豊富 |
ターゲットとするペルソナやペインが明確 | コスト以外の面との関係性(トレードオフ)、ワークロード全体の最適化 |
グローバルでの広がりに勢いがある・トレンド | |
継続的な発展・更新が期待できる |
最適化以外のテーマ(成果・評価、予測・計画、配分)
クラウドコスト管理を実践することで得られる成果として下記のものがあります。それはどういったもので、どのようなことが必要なのか。
- maximizes the business value of cloud(クラウドのビジネス価値を最大化)
- enables timely data-driven decision making(データに基づいたタイムリーな意思決定)
- creates financial accountability(財務上の説明責任を果たす)
成果・評価
ビジネス価値を最大化というが、クラウドを利用することの価値はなんだろう?評価する指標には何があるのか。
ビジネス価値
- AWS Cloud Value Framework
KPI
- https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/kpis-enterprise-journey-from-technology-to-business/
- https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/financial_professional_kpi_cloud_value/
- https://aws.amazon.com/jp/blogs/news/navigating-the-cloud-key-performance-indicators-for-success/
ユニットエコノミクス・ユニットメトリック
- https://docs.google.com/presentation/d/1mEyY8Ry759OoXjc7rWidLd-UYyE26-SH9_2a_lLf05A/edit#slide=id.p1
- https://www.finops.org/wg/introduction-cloud-unit-economics/
- https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws-cloud-financial-management/tag/unit-metrics/
- https://speakerdeck.com/bee3/kosutoguan-li-falseshi-dian-karakurautoli-yong-ke-ti-toxiao-guo-nipo-ru?slide=20
クラウドコスト管理の取り組みへの KPI・成熟度
- https://catalog.workshops.aws/well-architected-cost-optimization/en-US/2-expenditure-and-usage-awareness/150-goals-and-targets
- https://www.finops.org/wg/finops-kpis/
- https://www.finops.org/framework/maturity-model/
- https://assessment.finops.org/
予測・計画
引用元: https://dev.classmethod.jp/articles/2022-report-reinvent-cop205
- https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws-cloud-financial-management/forecasting-blog-series-1-3-ways-to-more-effectively-forecast-cloud-spend/
- https://aws.amazon.com/blogs/aws-cloud-financial-management/understand-and-build-driver-based-forecasting/?nc1=h_ls
配分(可視化)
- 按分(ショーバック)と配賦(チャージバック)
引用元: https://www.oro.com/zac/blog/allocation/#chapter_body_4
例: AWS サポート費用を部門数で割り算して分けて(按分)、情報システム部から各部門に内部請求する(配賦)
- 参考になるコスト配分の考え方・アプローチ
おまけ
定期的に情報をキャッチアップする際に参照している情報元